『 家を継ぐ 』

礒村 安倫

福井 龍介

一般社団法人倫理研究所 法人スーパーバイザー 株式会社フィディア 代表取締役

プロフィール
昭和53年3月 米子高専建築学科 卒業

昭和53年4月 竹中工務店 入社

平成元年    (株)福井工務店 入社

平成4年   (株)フィディア 社名変更(創業35周年)

平成10年    鳥取県準倫理法人会開設 幹事長拝命

平成17年9月 鳥取県倫理法人会会長 拝命

平成25年9月 (一社)倫理研究所法人スーパーバイザー 拝命

レポート

32歳でUターンし父の経営する株式会社福井工務店に入社。
33歳から1年間かけて自分のルーツをたどった体験のお話です。それから6年後あることがきっかけで社長を交代、事業を継承することとなりました。それから、自分探しの旅をいたしました。

39歳で社長になって最初の2年は良かったですけど40代は苦しかった。公共投資がどんどん減る時代でした。苦難から逃げてばかりでした。その頃100年カレンダーを買いました。自分が60歳になるのはいつ頃だろうか。
その時は家族(息子、双子の娘、嫁さん、両親)はどう祝ってくれるか想像してみる。それから、70歳、80歳、90歳、100歳。

ここまでくると、自分の肉体はかなりの確率で滅びる。やがて、息子たちが自分の遺志を引き継いでくれる。命のバトンリレーがされていくと思います。
この100年カレンダーは、自分の人生を俯瞰してみることが出来ます。

栞の第1条に、「昨日は過ぎ去った今日であり、明日は近づく今日である」今日のほかに人生はない。今日のうちの今という1点の集まりが人生である。
このことを時々感じないと忘れてしまうんです。
今私は59歳ですが、心は30代のままなんです。現実は自分も周りも変わっているんです。自身、家族、会社の重要な日にちを100年カレンダーに書き込むことで人生を俯瞰できます。

竹中工務店時代のお話。

人生の転機が来たのは32歳の時。

父から職場に電話があって「母が大きな病気をした。すぐに帰ってこい。」と言われる。見舞いで「ちょっと帰って来い」という事ではなく、「会社を辞めて帰ってこい」という事。

その頃、仕事は楽しかったが少々疲れていた。一つの現場が終わろうとして、そして次の新しい現場(7年がかりの大変大きな現場)も決まっていた。人それぞれ人生の節目があると思いますが、私はこの時でした。

家に帰って父は私にいくつかの事を用意してくれていました。

そのひとつが経営を学ぶ研修。地元の会計事務所紹介で、臼井佐吉公認会計事務所主催、経営者コース(全国から20人)1年間勉強。
月に1回3日間東京で研修を受ける。

臼井さんがきっかけで倫理法人会に入る。丸山敏雄創始者の側近の方でした。
1年間の勉強の3分の1は、会社の財務の勉強をします。

3分の1は、会社の組織力の勉強をします。残りの3分の1は、家系図を作る。…と言われる。私の心の中では、やりたくない!家系図を作って何になる!と疑問に思う。

それから私は1年かけて自分探しの旅をやります。
まず戸籍謄本を取る。亡くなった人は除籍謄本があります。

最初に自分の戸籍を取りました。それから、父の戸籍を取りました。
祖父の除籍謄本を取りました。祖父は3回結婚をしていました。2番目のお母さんが父の本当のお母さんでした。家には隠していることがたくさんあるんですね。

昔は家を継ぐために養子縁組が頻発していた。

父方の5代前までの家系は割に簡単に調べることができた。

それから、母方の家系を調べる。母の本当の父は戦死し、母の母は母を養子に出した。この時期のタイミングで突然母のいとこの方が会社に訪ねて来られる。
その後、父のお墓参りと母の生まれた家を教えてくれる。

その家を見た母は号泣。自分ももらい泣き。母の母は存命だったが、母が女学校時代に1度会いに行ったことがあり、その時冷たくされて憎んでおり存命でも会うことを拒んだ。その後、コンサルタントの先生に家計調査の報告をする。

 

先生から、私が子供の頃の母の対応はどうだったか聞かれる。
過度な愛情を注いでくれたことを伝えると、その理由を説明され(お母さんはずっと独りぼっちだった)色々思いを巡らし号泣してしまう。

 

さらに、父の事も解説を受け(子供の頃苦労をされた事、父の本当の母の子を残して無くなっていく無念な気持ち)さらに号泣。涙の洗浄となる。

 

家系図を調べることで、子供として下からの目線だけでなく、父母の子供時代の上からの目線で感じることができた。さらに、妻の家系も調べる。39歳の時、父の体調が悪くなりお墓の整理・統合をした方がいいとアドバイスをもらい統合する。大変すっきりする。

この年は様々なことをやり切った年でした。見えない力が私を支えてくれた。
神の筋書きに合する生き方を自身に問う。

会長談  
福井講師曰く、「ルーツを調べる旅の意味・100年カレンダーの意味は、僕らは今の命のトップランナーです。祖先から引継ぎ、今最先端を行ってます。やがて誰かに引き継ぐ。それまでの役割を仰せつかっている。周りにある物は何一つ自分の物はなく、すべて預かりもの。自分の使命は何か。それをやり遂げていく事。」人生を達観した素晴らしい内容でした。今回の講話が私の節目かもしれません。